| 読売新聞 YOMISAT 中国・アジア衛星版
リレーエッセー香港
効率悪い電力消費
香港に住みつく外国人が真っ先に音を上げるのが、異様に寒いエアコンである。
私とて例外ではなく、冷蔵庫みたいなオフィスビルで働いていた時分は、デスクの足元に電気ストーブを入れていた。真夏の暑い盛りに、なにが悲しくて、だったが、十年経った今もホテル・ニッコーの23.5度宣言を唯一の例外に、改善の兆しをとんと聞かない。
これではどんなに発電したところで追いつくまい、と思いきや、なんと夏場のピーク需要を満たして40%も(冬場に至っては70%も)余りある、というのだから驚いた。
そうと聞いたら、「香港電燈(香港電力)のラマ島火力発電所拡張計画、認可まであと一息」なんてニュースに接して、したり顔しちゃいられない。
「香港電燈」のシマである香港島とラマ島以外の九竜、新界、離島の電気事業を独占している「中華電力」だって、五年前に建てた発電所の最終フェーズが凍結されているほど、電気だぶつき状態にあるという。そんなこんなで、余裕がある分をお宅に回しましょうと「香港電燈」に申し出たところ、歓迎されるどころか、あっさり断わられたそうだ。
「香港電燈」の唯我独尊の拠り所は、六〇年代の急成長時代に香港政庁(当時)が公益事業に対して設備投資を促すべく、発電所が稼働していようがいまいが電気代に上乗せしてよい、と保証した優遇措置にある。要するに、拡大路線をとる限り、食いっぱぐれがないのだ。
言っては悪いが、カリフォルニアの電力会社が操業費より安上がりと、お客さんに省エネ電球を配り、スエーデンが省エネによる需要削減をにらんで、原子力発電所の半分を閉鎖するこの時代に、工夫がないったら。
原発と言えば、我が家は、中華電力が出資した中国の大亜湾原発の30キロ圏内にある。何というか、何かあったらはいそれまでよ、の距離なのである。
余談であるが、日本の電気の三分の一が原子力なのだそうだ。CO2削減の動きに合わせて、「クリーンな」原発を推進する動きがあるが、この先何万年も何千万年も危ないままの燃料ゴミを抱え込むことがクリーン?と素朴な疑問を抱かざるを得ない。推進派も、安定供給を唱えてる方が識者っぽい、とマッチョな誤解をしているだけのような気もするし、死んだら元も子もなかろうに、みんなで渡れば恐くない、ってやつなんだろうなあ。
それはともかく、「香港電燈」のおひざ元ラマ島には、「A Clearner Tomorrow」の頭文字をとって「ACT Now!」という市民グループも結成された。その主張も、無駄を承知でなにもわざわざ二十ヘクタールも埋め立て、(天然ガス調達の場合)七十五キロも海底パイプを敷いて珊瑚礁を破壊するは、CO2や酸性雨の原因となるSO2を出すことないじゃないか、に尽きる。
しかも、省エネ専門家の試算によると、空調の効率を上げたりするだけで、ビルの消費電力を半分に減らすなんてわけもないことらしい。ここはひとつ董行政長官にも半袖の背広など着ていただき、適正温度を訴えてもらいたいものだ。
消費者としても、過剰な設備投資のつけは電気代に回ってくるんだから、他人事ではない。そんなお金があるんだったら、ソーラーや風力発電の開発に回してもらいたい。香港人が一笑に付す代替エネルギーも、他所ではしっかり実用化されており、決して絵空事ではないのだから。
夫の道楽のハイファイがそびえ、エコ仲間からは待機電力も食う消費電力の大きな家とばかにされている我が家であるが、代替エネルギー派の私は、おもちゃの域を出ないとはいえ、ソーラー・オーブンだってソーラー表札だって持っている。充電中の昼間は間抜けな表札は、美的センスに反する、と夫にひっこめを要求され、おかげで家に招いた人が必ず道に迷う事態を招いたが…。
なにはともあれ、一消費者といえども省エネにこれ努め四分の一も電気代が浮いた日にゃ、火力どころか原発だって大手を振って要りません、と言えるではないか、と、今日もいじましく夫がつけっぱなしにした家電を消して回る私である。
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